『非常麻将』2000年北京初演時のキャスト 左からフン・ユエンジャン / フア・ビン /  ウー・ガン 
中国「改革開放」の演劇ブーム
『小劇場 若者で大盛況』


 中国で、新しい時代の空気をとらえた小劇場の演劇がブームだ。人気を支えているのは、大学生や中高生などの若者たち。来日公演も続いており、日中文化交流に新鮮な風を吹き込む。

 この2,3年、中国では小劇場の演劇が人気を集めている。
 昨年は、中国戯劇家協会主催により、初の全国規模の小劇場演劇祭が開催され、11の秀作が北京にて上演されて大盛況だった。
 改革開放が始まり、約20年経つ中国。小劇場の歴史も、その流れと重なる。文革時代は、8つの革命模範劇しかなかったが、小劇場の特徴は、より自由な「演劇精神、表現形式の探索」。しかし、外国人が想像しがちな「反体制」の旗印はない。中国では今も「文芸は社会主義及び人民に奉仕するもの」という毛沢東の60年前の思想が基本にあるからだ。

 「現実を反映」と支持

 観客の中心は、大学生を始めとする若いインテリ層だ。
「テレビや映画は娯楽性が強すぎて面白くない、内容もマンネリ。小劇場作品は見応えがある」
「現実を反映した作品が多い」
と支持する理由を話す。劇場が小さいために俳優を間近に見られることや、チケットの安さも彼らを引きつけている理由のようだ。
 一般のチケットは、80元(約300円)前後。経済が急速に発展している中国では、大卒のホワイトカラーで、3,000元以上の月給をもらう人も珍しくない。そんな彼らにとって、約80元のチケットは高くない。また、どの劇場でも30〜40元程度の学生チケットを用意しており、観客には10代の中高生も少なくない。
 こうした小劇場ブームのリーダー的存在なのが、いま中国で最も脚光を浴びている奇才、李六乙(リー・リュウイ)。中国でも名実共に最高の劇団のひとつである北京市直轄の北京人民芸術劇院(北京人芸)に所属する演出家だ。

雀卓囲んでの心理劇

 小劇場で活躍する演劇人の多くは、公営の劇団に所属して活動している。だが、中国では、所属する職場の仕事がない時は、給料の6割が支給されたうえ、外部の仕事をしてもよいことになっている。
 李自らが書き下ろし、4面舞台で演出した「非常麻将」(フェイチャン・マージャン)は、彼と俳優達が資金を出し合って上演した作品だ。2000年に北京の小劇場で初演され、二百数十席が毎日120%以上埋まった。昨夏の来日公演でも好評だった。
 「非常麻将」はこんな話だ。
 北京の、とある1911号室。麻雀人生に別れを告げる最後の1局を打とうと集まった3人の男達。だが、最後のひとりが来ない。3人とも彼の死を望み、それぞれ別々に手を打ってから、部屋に来た。が、そのことは秘め、来るはずのない相手を待ち続ける。自分以外の誰かが殺したのか。生きているのか。憶測、想像、疑い。過去と未来への思いに揺れる男達。想像の余地を多分に残したその作風を、重鎮達はこう評した。
 「結論はひとつでなくていい。価値観の多元化の時代の到来だ」
 この作品の面白さに素直に反応したのは、中高生や大学生などの若い世代だ。
 上演後、舞台を見慣れた大人達が腑に落ちない顔をしているのをよそに、中高生たちが嬉々として演出家の李を囲み、感想を語る姿があった。
 「既成概念のない世代は純粋に舞台を観るからだろう。舞台を観るには直感が大切だ」
と李は語る
 もう一人の小劇場のリーダーは、独立プロデューサーの袁鴻(ユアン・ホン)だ。彼は最近、台湾の演出家と組み、民間小劇場「北劇場」を北京に誕生させた。この年末、初の国際小劇場演劇祭をここで開く予定だ。日本からの参加もあるという。
 時代をリードする小劇場は、日本との文化交流に果たす役割も大きい。李は今年4月、富山・利賀フェスティバルで自作を披露したほか、来年には再び「非常麻将」を携えて来日する予定だ。

『AERA』2002年5月20日号より   AERAバックナンバー 2002.05.20
文・菊池領子 ryoko@888.104.net
Photo・李六乙戯劇工作室         




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北京の演劇事情 

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